音響機器や映像機器を繋ぐには様々なコード・プラグ・ジャックがあります。最近知った驚きの事実は、『プラグ・ジャックの規格と伝送形態は別』ということです。なんとなくですが、プラグ・ジャックの形状が合っていれば繋げはそれで大丈夫だと勝手に思っていましたが、そうでもないみたいなのです。
バランス接続とアンバランス接続
信号を送り届ける方法にはバランスとアンバランスの二つがあります。バランスとは均衡が取れているという意味で、何の均衡が取れているかというと伝送する信号の総和が常にゼロになるように信号を送っているということです。
音は振幅と周期のパラメーターで表現される波であり、それを電気的な振幅・周期に変換して情報を伝え、最終的に音の振幅・周期に戻して音として聴くことのできる状態にします。マイクの信号はとても微弱で、伝送途中で外的要因でノイズの影響を受けやすいです。
バランス接続では常に総和がゼロになるように情報を送っていますので、例えば「1」という情報を送るときに一緒に「-1」という情報も送ります。総和は0ですね。途中で+0.2というノイズ情報が付加されると、それぞれ1.2と0.8という情報になります。
*ノイズ情報は同じものが付け加わったりけずられるイメージ。
バランス接続では受け取る際に、反転している情報を反転し平均を取ります(と僕は理解してます)。
ノイズがない場合、「1」「-1」と伝わってきた情報は、「1」「1(-1の反転)」として、(1+1)÷2=1という感じで情報を処理します。
さて、ノイズが+0.2乗っている場合は、情報は「1.2」「-0.8」と伝わってきますので、
(1.2+0.8)÷2= 1
となります。つまりノイズ情報は相殺されるのですね。
ですからバランス接続はノイズに強いということになるのです。では何でもかんでもバランス接続にすれば良いかというとそうではなくて、ノイズの影響が大きそうな箇所だけに使う方が費用対効果が望めます。
バランスとアンバランスの変換
多くのマイクはXLRケーブルという3極端子の線を採用しています。これはバランス接続用のケーブルでアメリカのキャノン社(カメラのキヤノンとは別の会社)が発明したのもありキャノンケーブルという呼ばれ方もしています。
さてここで問題、写真のケーブルは入力側が右と左それぞれXLR端子で出力側は3.5mmのステレオミニプラグというケーブルです。ステレオミニプラグというと常にステレオ信号を伝送するものと思いがちですが、3極で正の情報(ホットといいます)と反転した負の情報(コールドといいます)とGND(いわゆるゼロ)を伝送する場合もありますのでプラグを見ただけではバランスかアンバランスかはわかりません。
3極でステレオ信号を送る場合は、左チャンネルの正の情報と右チャンネルの正の情報とGNDを送ります。これはアンバランス接続です。
まとめると、ステレオプラグで送れる情報は
- アンバランスのステレオ信号
- バランスのモノラル信号
ということになります。
写真のケーブルの場合、バランスで送られてきた情報のうち正の情報(ホット)のみ利用してアンバランスでステレオ信号を送る形になっています。
バランスからアンバランスに信号を変換する回路も世の中にはありますが、このケーブルの場合は途中に回路が組み込まれている感じはないので、単純にコールドの信号を切り捨てている気がします。という意味ではバランス接続は活かされていないということになります。
僕が毎日視聴しているdrikinさんのYouTubeチャンネルでこの種のケーブルの片方にダイナミックマイクを接続してATEM miniに繋いだらホワイトノイズが軽減されたとありましたが、個体差なのかウチの場合には然程改善が認められませんでした。これは多分、利用しているY字ケーブルの違いによるのかも知れません。
参照:「ケーブル一本でいけた!正しい知識でATEM Miniを使いこなそう!」第946話
暫定的にはミキサーなどを介してラインレベルに信号レベルをあげてATEM miniに送るとホワイトノイズがなくなるというのが解決策なのですが、
- バランスをアンバランスに変換する回路の導入
- インピーダンスを合わせる
- グラウンドループの影響がないか調べる
あたりがATEM miniの本来のマイク入力を使いながらホワイトノイズを解決する方法なのかなと思っています。個人的には2番目か3番目が大きな理由だと考えています。
CLASSIC PRO ( クラシックプロ ) / CMX212 :僕が購入したYケーブル